映画レビュー『ひゃくはち』
『ひゃくはち』(日本、2008)
評価★★★★★
おもしろかったー。
隠れた(隠れてる……よね?)名作だと思う。
主人公がコケるシーンが一番の泣き所、って映画、今まであっただろうか……。
甲子園を目指す高校野球児。
でも、みんながみんな、試合に出られるわけじゃない。
作中のセリフにもあるように、3年間がんばっても、一度もグラウンドに足を付けられない人もいる。
だけど、それが汚点だと、ネガティブなことだと、誰が決めるんだろう?
がんばっても試合に出られなかったこと、厳しい練習に耐えたこと、悔しい思いをしたこと……それらはきっと何かしらの財産になる。
煩悩の数は108個で、野球のボールの縫い目も108あるという。
人の失敗を願ったり、才能に嫉妬したり、人間だから、そりゃあ、そういうのはあると思う。
だけど、そういうドロドロしたものがあって、だからこそ、がんばれる。
真剣にがんばってるからこそ、そういう感情が生まれるものでもある。
煩悩に向き合って、辿り着いた場所。それが自分の望むものでなくても、きっとそのとき、心から笑えるんだと僕は思う。
映画の前半は、野球少年たちが女子大生と合コンしたり、酒飲んだりタバコ吸ったり、なんかもうわちゃわちゃで、でも根っからの文化系で、学生時代はあんまり友達のいなかった僕からすると、『こういうのいいなぁ』って思った。
けど、『これをずっと観させられるのは辛いな』とも思った。
その思った矢先、つまり中盤に差し掛かってから、物語が急変する。
そこからのドライブ感もまた良かった。
ピッチャーの投球術じゃないけれど、緩急の付け方がすごく良くて、また展開も、前半のウェーイな感じがあってからの落差だったので、かなり熱くなった。
青い空がよく似合う、観終わってから涙っていうか汗を拭うような、そんな映画だったなぁ。
良かった。