映画レビュー『ジャズ大名』
『ジャズ大名』(日本、1986)
監督:岡本喜八
評価:★★★★★
なんだこれ……すげぇカオスな映画だった。
簡単に言えば、江戸時代の駿河(今で言う静岡)に、黒人が漂着して、藩主やら大名やら巻き込んでジャズセッションするという、設定からしてカオス。
戦争? そんなもんどうだっていいんだよ、ジャズだジャズ。
不義密通? そんなもん知るか、とにかくジャズだ。
ジャズのコード? 演奏の仕方? おいおいここは日本だぞ、ジャズの文化なんてあるわけなかろう、しかしそんなこたぁどうだっていい、楽器のないもんはタライを叩け、そろばんを弾け、篳篥をデタラメに吹け、朝が来たって夕暮れが来たって、どうだってええじゃないか、ええじゃないか。
主人公? というか物語の中心人物である海郷亮勝は、小さな城の主だ。
世は幕末。亮勝の城は、官軍と幕府軍の通り道となっており、亮勝のもとには、「城を通らせてくれぬか」と毎日たくさんの申し出が来る。
亮勝はそれに飽き飽きしていた。
そして出した答えは、『いっそのこと道にしてしまおう』。
道。
右と左を繋ぐ道。
西と東を繋ぐ"道"。
そして過去と未来を繋ぐ道であり、束縛と自由を繋ぐ道だ。
最終的にそれらがすべて一つになり、熱狂と狂乱と、なんかいろんなものが闇鍋のようにサラダボウルのように交じり合って、えげつないカオスを生み出す。
そうか、これが本当のジャズなんだ……!
ジャズと言えば、今年観た『セッション』を思い出す。
この映画と『ジャズ大名』は、性質がまるで違う。
というか『セッション』は、ジャズ映画というよりも、ジャズをテーマにしたバトル映画というか、復讐劇というか、愛憎劇というか、そういう感じだった。
もちろん『セッション』もすごく好きです、『ジャズ大名』のラストと対照的な、緊張感溢れるあの展開、もう一回観たい。
『ジャズ大名』、この映画を知ったのは、ZAZEN BOYSの向井秀徳さんがきっかけだった。
何かで『ジャズ大名』がどうの、という発言をされていて、「いつか観たいなぁ」と思っていたのだった。
そういえばZAZEN BOYSの音楽も、フリージャズ的な要素がある。
僕は毎年ZAZEN BOYSのライブに行っていて、また今年の12月も楽しみだ。
ZAZEN BOYS - ASOBI @ りんご音楽祭2014 - YouTube
この曲はフリージャズっぽくないね。でもかっこいいね。
音楽って良いなぁ……って思わせてくれるような映画じゃなくて、『田園に死す』とか、『幕末太陽傳』とか、ああいう感じの、シュールとアヴァンギャルドが混在した、サイケデリックな映画だった。
僕は好きだね!
大好きだね!
僕はAmazonプライム会員で、Amazonプライム会員だと、プライム・ビデオってのがあって、無料で観れるわけだ。
いや、このジャケットだけで怪しさ爆発してるよね。
不思議とYahoo!映画の評価は良くない。
まぁ、突っ込みどころ満載の映画だし、一般ウケするようなものでもないし、この評価は妥当かなとも思うね。
とはいえすごくおもしろかったので、ぜひ観てほしい作品でもあります。