映画レビュー『いま、会いにゆきます』
『いま、会いにゆきます』(日本、2004)
監督:土井裕泰
評価:★★★★★
いま、会いにゆきます スタンダード・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2005/06/24
- メディア: DVD
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ううっ、脚本がすばらしいなぁ。
ミステリっぽくなっていて(実際、原作者はミステリ作家を目指していたらしい)、伏線の回収とミスリーディングがすごくうまいこときいてる。
そもそもこれは希望の話なんだね。
ぎりぎりネタバレしない範囲で紹介するけれど、たとえば物語のキーポイントになる澪の日記、あれを読むシーン、演出も相まって、何かすごく悲しいことが書かれてるような気になる。
けど違うんだ。
そこに書かれてるのは希望なんだ。
この物語は、不思議な構造になっていて……『奇跡』が二段重ねになってるんだよな。ネタバレしないようにしてるから、うまく言えないけれど……。
悲哀にして、泣けるような映画なら、たくさんあるけれど、この物語は希望で彩られている。
そこが素敵。
伏線回収とミスリーディングと、『奇跡』のようなものは、key作品、特に麻枝准さんの作品(『CLANNAD』や『Air』)を思い出します。
テーマも似通ってると思う。輪廻転生的な愛。『誰かを守りたい』という根源的な、プリミティブな気持ち。
なんかさぁ、ヒロインがさぁ、病気でさぁ、主人公もさぁ、ポンコツでさぁ、で別れが来てさぁ、でも結局奇跡が起きてさぁ。
都合よくできている。けれど、僕らの世界は不都合で、ままならないことが多くて、だから夢を見て、だから奇跡を信じて、だから愛する人のことを思い浮かべるんだろう。
考えてみれば、誰かに『会いにゆく』とき、必ずその『誰か』が世界のどこかに存在してる。
存在してることが、『会いにゆく』ことの前提になっている。
だけど、もし、『会いに』いった先に待ち受けているのが、僕の望まない未来だとしたら、僕は『会いに』いくだろうか?
もしその未来を、『会いにゆく』前に知ってしまったら、僕はそれでも、その人に『会いにゆく』のだろうか?
たとえそれが望まないものであったとしても、たとえさらにその先の未来に自分がいなかったとしても、誰かを想う気持ちは一瞬のものじゃない。
僕らが『会いに』いこうとしたときに生まれる気持ちは、同じ世界、時間にいる誰かのことだけを想うものじゃなくて、それよりももっと大きいもので、そこには世界も時間も関係なくて、というかそれらを超越するものであって、それこそ奇跡なんて風に呼ばれるものなんだろう。
望まないものだとか、自分がいないかもしれない未来だとか、そんなものはどうだっていい。
好きな人には会いにいかなければならないし、会いにいかなければならないのなら、いま、会いにゆくんだ。
こういう考え方は、舞城王太郎さんから学びました。
同じ監督の映画では、『ビリギャル』も観たな。
おもしろかった。
というか、『いま、会いにゆきます』と『ビリギャル』じゃ、『ビリギャル』の方が好みです。……ぶっちゃけると。
でも、『語りたくなる度』は『いまあい』の方が上かなぁ。エンターテイメント性は『ビリギャル』の方があると思うし、あとは個人的な好みだけど。
とはいえおもしろかったです。
観てよかったです。
人が死ぬ系の話で、後味が良くて、切なくならずに、むしろ温かい気持ちになれるってのは、なかなかないと思うんだ。
あー、そうだ。
ちなみに、ギミックが似ている作品として、『不束な君と素数な彼女』という小説があります。
……正直、内容忘れた。けど、この映画観て、唐突に、この小説の"一番肝心な部分"だけ思い出した。
まぁ、それだけなんだけど……。