映画レビュー『いま、会いにゆきます』

いま、会いにゆきます』(日本、2004)

監督:土井裕泰

評価:★★★★★

いま、会いにゆきます スタンダード・エディション [DVD]

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ううっ、脚本がすばらしいなぁ。

ミステリっぽくなっていて(実際、原作者はミステリ作家を目指していたらしい)、伏線の回収とミスリーディングがすごくうまいこときいてる。

そもそもこれは希望の話なんだね。

ぎりぎりネタバレしない範囲で紹介するけれど、たとえば物語のキーポイントになる澪の日記、あれを読むシーン、演出も相まって、何かすごく悲しいことが書かれてるような気になる。

けど違うんだ。

そこに書かれてるのは希望なんだ。

この物語は、不思議な構造になっていて……『奇跡』が二段重ねになってるんだよな。ネタバレしないようにしてるから、うまく言えないけれど……。

悲哀にして、泣けるような映画なら、たくさんあるけれど、この物語は希望で彩られている。

そこが素敵。


いま、会いにゆきます。(予告編) - YouTube

 

伏線回収とミスリーディングと、『奇跡』のようなものは、key作品、特に麻枝准さんの作品(『CLANNAD』や『Air』)を思い出します。

テーマも似通ってると思う。輪廻転生的な愛。『誰かを守りたい』という根源的な、プリミティブな気持ち。

なんかさぁ、ヒロインがさぁ、病気でさぁ、主人公もさぁ、ポンコツでさぁ、で別れが来てさぁ、でも結局奇跡が起きてさぁ。

都合よくできている。けれど、僕らの世界は不都合で、ままならないことが多くて、だから夢を見て、だから奇跡を信じて、だから愛する人のことを思い浮かべるんだろう。

CLANNAD

CLANNAD

 

 

考えてみれば、誰かに『会いにゆく』とき、必ずその『誰か』が世界のどこかに存在してる。

存在してることが、『会いにゆく』ことの前提になっている。

だけど、もし、『会いに』いった先に待ち受けているのが、僕の望まない未来だとしたら、僕は『会いに』いくだろうか?

もしその未来を、『会いにゆく』前に知ってしまったら、僕はそれでも、その人に『会いにゆく』のだろうか?

たとえそれが望まないものであったとしても、たとえさらにその先の未来に自分がいなかったとしても、誰かを想う気持ちは一瞬のものじゃない。

僕らが『会いに』いこうとしたときに生まれる気持ちは、同じ世界、時間にいる誰かのことだけを想うものじゃなくて、それよりももっと大きいもので、そこには世界も時間も関係なくて、というかそれらを超越するものであって、それこそ奇跡なんて風に呼ばれるものなんだろう。

望まないものだとか、自分がいないかもしれない未来だとか、そんなものはどうだっていい。

好きな人には会いにいかなければならないし、会いにいかなければならないのなら、いま、会いにゆくんだ。

こういう考え方は、舞城王太郎さんから学びました。

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)

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同じ監督の映画では、『ビリギャル』も観たな。

おもしろかった。

というか、『いま、会いにゆきます』と『ビリギャル』じゃ、『ビリギャル』の方が好みです。……ぶっちゃけると。

でも、『語りたくなる度』は『いまあい』の方が上かなぁ。エンターテイメント性は『ビリギャル』の方があると思うし、あとは個人的な好みだけど。

とはいえおもしろかったです。

観てよかったです。

人が死ぬ系の話で、後味が良くて、切なくならずに、むしろ温かい気持ちになれるってのは、なかなかないと思うんだ。

あー、そうだ。

ちなみに、ギミックが似ている作品として、『不束な君と素数な彼女』という小説があります。

不束な君と素数な彼女

不束な君と素数な彼女

 

 ……正直、内容忘れた。けど、この映画観て、唐突に、この小説の"一番肝心な部分"だけ思い出した。

まぁ、それだけなんだけど……。

movies.yahoo.co.jp