映画レビュー『インスタント沼』
『インスタント沼』(日本、2009)
監督:三木 聡
評価:★★★★(★)
くっそー!! おもしろかったー!!
最初、『なんかガチャガチャしてて、ツッコミ不在だし、キャラもなんか滑ってる(ように見える)し、全然好みじゃないわー』って思ってたんだけど、1時間くらいしてから、妙にかわいく思え出した……。
ストーリーは、まぁストーリーらしいストーリーってないんだけど、ジリ貧のOLが、仕事辞めて、本当の父親に出会って、なぜか急に骨董屋始めて、なぜかパンクロッカーと一緒に沼を作るっていう、荒唐無稽な話。
突っ込みどころがすごく多くて(ツッコミ役がいないし……)、「いやいやおかしいでしょ」っていちいち思っちゃって、正直、そのノリには個人的には合わなかった(クドカンとかの映画が好きならハマると思う。クドカンも出演してたし)。
だから途中までは、評価が★★★だったんだけど、じゃあなんで★★★★(★)になったかっていうと、ラストがすっごく素敵だったから。
あのラスト、いいなぁ。
とにかく笑顔。「なんとかなるでしょー」的な笑顔。笑顔でいないと始まらないっしょーみたいな。
最初、主人公はやたらとこだわりが多くて(折れ釘がどうとか、静電気がどうとか)、でも物語が進行するにつれ、そんなものどうだっていいや、笑ってればいいやって、進化(良い意味での退化?)していく感じがツボった。ミロだけは最後まで沼っぽくしていたけれど。
あと、Yahoo!映画のレビューじゃ、伏線がどうとか書かれていたけれど、伏線というか、「あれをここで持ってくるんだ」って演出に思わずニヤリ。
言い回しとかはすげー寒くて(「バヤイ」とか「だいじょうび」とか、意図的に使ってるんだろうけど)、ちょっとうんざりしたけれど、演出の良さと、小ネタのクオリティに感動したので良しとする。
うん、小ネタがすごい。ポスターとか。
ああいうのって全部美術さんが作ったのかな? すげぇなぁ。まぁそれも一部滑ってるように思えるけれど……。でも、ゲルニカにはかなり驚愕した。あとカッパの動きのリアルさね。
そう、カッパがリアルなんですよ。
反面、ラストのアレのCG感。まぁ、B級感が出てて良かったのかな。
あとインスタント沼って発想にもやられた。なるほどインスタント沼ね、って。
……物語の内容に触れないと、何書いてるか分からない気もするけれど、カッパとか、ツタンカーメンの占いマシーンとか、電気屋のパンクロッカーとか、骨董屋のおっさん(本物の父親)とか、いろんなガチャガチャしたものが出てきて、ツッコミ不在のまま辟易しながら見てるとだんだんそれらがかわいく思えてきて最終的には「おぉ……ええやん……」って妙な感動を覚えてしまう映画だった。
麻生久美子さんのかわいさもかなり評価にプラスになっている。
沼の底の底の底の、どん底まで沈みきったときに観たら元気になれると思う。あと、空元気なときもいいと思う。
ただ、やっぱガチャガチャ感に馴染めなかった部分があるので(これは個人的な好みの問題なので仕方ない)、評価は★★★★(★)=4.5とする。