映画レビュー『大阪ハムレット』
「大阪」を舞台にした映画。なかなかおもしろかった。ただ、ノリきれなかった部分もある。
主人公は特になくて、大阪のどこにでもあるような田舎の、一家族を中心にして物語は進む。
タイプの違う(真面目な長男、不良の次男、女の子になりたい三男)兄弟と、肝っ玉母さんと、お父さんは亡くなっていて、その代わりに気弱な叔父さん。
それぞれにいろんな想いがあって、いろんな悩みがあって、それが交わったり交わらなかったりして、最終的に一つのまとまっていく。
そのまとまり方はおもしろかった。
長男の、「3倍年を取るから」みたいなセリフにはかなりぐっと来た。あの告白はいかすなぁ。
次男は、学校の先生にからかわれ、『ハムレット』を読み始めるんだけど、そもそもタイトルに『ハムレット』とあるように、物語の核となる動きをする。最後に見せる成長というか、大阪ならではの「なんでもええやろ、文句あんのか」みたいな良い意味での開き直りは、個人的に好き。
一番ぐっときたのは三男。個人的に性同一性障害とかジェンダーについて興味があったんだけど、この映画観てそれがかなり濃くなった。同性愛者とは似て非なる者だよね。そのへんもうちょっと勉強したい。でも、浴衣着て寝てるところを、近所の少年にちゅーされるシーンかなり萌えた。
ハッとするセリフがあったり、展開も良かったんだけど、ノリきれない部分も多々あった。もともとが漫画だからか、全体的に二次元のフィルターが掛かっているようにも感じた。リアルで描いてるわけだから、もっとままならなさがあってもいいように思えた。
スタッフロール後のシーンは、特に蛇足かなって個人的には思う。スタッフロール前のあの部分で終わってこそ、「誰の子でもええねん」って、大阪の田舎とか特有の、「細かいことはどうでもええやろ」みたいなおおらかさを残せてたように感じるんだよなー。
綺麗にまとまってて、その部分は良かった。ただ、綺麗にまとめるなら、辻村深月さんの小説みたいに、深いところからぐっと伏線を回収して巻き返すようなフックがあれば、もっとエンターテイメント性は高くなってたと思う。もしくは、エンターテイメント性にこだわらず、あえてまとまりをなくして、極端だけど起承転結に執着しない感じにしたら、さらに僕の好みになってたかもしれない。いずれにせよ、感動したけど、好みのストライクゾーンからちょっと離れたかなぁ。
観てよかったですー。
原作はこっち。
映画はこれ。
Amazonビデオで観るべし。