映画レビュー『ヒトラー ~最期の12日間~』

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おもしろい。かなり好きな映画。

ストーリーはタイトル通り。ヒトラーが自殺するまでの12日間を描く。

何がおもしろいかって、史実を元にした映画なんだけど、きちんとエンターテイメント性がある。もちろん脚色はしているだろうけど、それぞれにキャラが立っているし、批評性もあれば、立派な群像劇にもなっている。あと、実際の人物と、それを演じる役者がかなり似ているw(グーグルで調べた)

 

ヒトラーと言えば、おそらく20世紀で、悪い意味で世界にもっとも影響を及ぼした人間だろう。たった一人の人間のエゴや理想が(もちろん時代の背景や、時の運なんかもあるだろうけれど)、600万人以上ものユダヤ人を殺し、全世界を巻き込む戦争を勃発させた。

歴史的な大犯罪者であるが、この映画では、その内面性にぐっとフォーカスを当てられている。

ヒトラーのやったことは許されるべきことではないし、賛同されるものでもない。しかし、ヒトラーも一人の人間であり、人間であるならば、その内面を映画で描かれることは許される、と僕は思う。実際、秘書としゃべっている時のヒトラーは、大犯罪者というよりも、おとなしい近所のおっちゃんって感じだ。しかし、戦争のこととなると、人格が百八十度変貌する。どちらが本当のヒトラーなのかは分からないけれど、おもしろいのは、自分が無茶を言っているとヒトラー自身も自覚しているところ。自分で自分を演じている。とはいえ、その才能がなければ、ナチス・ドイツを率いて第二次世界大戦を勃発させるだけの、悪い意味でのカリスマ性はありえなかっただろう。

ちなみに、この映画ではヒトラーが死ぬまでの12日間しか描かれていないけれど、『ヒトラーとナチ・ドイツ』という本では、その生涯と周辺と影響について、ものすご~~~く分かりやすくおもしろく書かれているので、おすすめです。

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

 

 

さてさて、史実を元にした映画ではあるけれど、エンターテイメント性もあるよと言いました。この映画では、一応の主人公みたいなのがいまして、それが秘書のユンゲ。このユンゲと、若きヒトラー・ユーゲントのペーターが、ふっと手を取るシーン。あそこが本当に美しすぎるし、この映画の究極の見どころだと思う。

ナチスのためなら死んでもいいと、そういう風潮がある中で、最後の最後で生を選び、勝ち取った二人の出会い。ぐっときた。

あとはシュペーアもかっこいい。ウィキペディア読んでさらに惚れた。ゲッベルスのような妄信的な狂ったインテリみたいなキャラも好きだが……。

 

この映画は、第二次世界大戦のドイツをテーマにしているんだけど、もちろん第二次世界大戦はドイツだけが主軸じゃない。ドイツとイタリア、そして我が国日本と、日独伊三国同盟が、いわゆる第二次世界大戦枢軸国

この映画を観てて思ったのは、意外とみんなヒトラーの命令に背いてんだねってこと。ゲーリングとか。

僕は最近、『戦前回帰』という本を読んで、これがまたすっごくおもしろくて、今回の映画とリンクさせていろいろ考えることができた。

この本の主題は、安倍政権による日本が戦前の思想や考え方に退化していっていないか? というものなんだけど、前半部分で、戦時の日本についてすごく詳しく書かれている。ドイツやイタリアは、戦争に勝ち目がないと見切りをつけやいなや、ヒトラーの命令に背き、市民を守ったり(人道的な意味ももちろんあるけれど、国の存亡や今後についての効率等を考慮した結果の行動)、連合国と戦後の条約について意見を交わしたりしている。けれども日本だけが、本土に原爆を落とされ、そして落とされてもなお玉砕覚悟で戦い続けた。神風特攻隊みたいな攻撃方法まで編み出して。

それはなぜか? なぜ日本だけがそんな無茶なことをしたのか? という問いかけからこの本がスタートするんだけど、この映画を観ると、たしかにこういう空気、日本じゃ絶対にありえなかっただろうなってのをいくつか感じた。

戦前回帰

戦前回帰

 

 

話が本の方向に逸れたけど、個人的な話で、第二次世界大戦にはすごく興味があって、その勉強にもなったし、何より映画自体がおもしろかったので、観てよかったです。ヒトラーの怒鳴り声が怖いけど、いろんな人にぜひ観てほしいです。

他にも第二次世界大戦についておすすめの本とかあったら教えてください。 

ヒトラー ?最期の12日間? (字幕版)

ヒトラー ?最期の12日間? (字幕版)

 

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